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黎明の風と永遠の指輪ー夜の世界で出会った二人、危険で甘い約束ー
黎明の風と永遠の指輪ー夜の世界で出会った二人、危険で甘い約束ー
Penulis: marimo

第一話 煌めきの中で

Penulis: marimo
last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-23 09:14:58

その夜、彼女はまだ知らなかった。

この出会いが、愛と指輪と、命の危険を連れてくることを。

――そして彼が、決して踏み込んではいけない男だったことを。

夜の大都会――。

 十二月の終わりの冷気は、まるで新しい季節の幕開けを知らせるかのように、頬をかすめて通り過ぎていく。

 街路樹にはイルミネーションが揺れ、金と白の光が風に合わせて瞬き、車のヘッドライトが宝石のようにきらめきながら流れていく。

 都会の喧騒が街全体を包み込み、あちこちから笑い声や音楽が漏れ出し、空気そのものが少し浮ついている――そんな夜だった。

 その中を、ひとり歩く男がいる。

 柊 蓮――二十六歳。

 若くして大企業の副社長に就いた男は、黒いコートの襟を立て、ゆっくりと歩いていた。

 普段の蓮ならこの時間、会食相手や父である会長に呼び出され、高級レストランの個室か、重役専用のクラブにいるはずだった。

 だが今夜は珍しく、そのどこにも行かず、車を途中で降りて“ただの一市民”として夜の街を流れていた。

 ――この時間に、ひとりで夜の街を歩くなんて、何年ぶりだろう。

 そんな呟きが胸に浮かぶ。

 街を歩きながら聞こえてくる笑い声やカップルのささやき、ふいに風に乗って流れてくる甘い香り。そのどれもが、自分にとっては遠ざけてきたものだった。

 息苦しくなるほど忙しい日々。

 責任と期待に押しつぶされる毎日。

 それでも立ち止まることは許されず、蓮は常に前へ前へと歩くしかなかった。

 そんな彼の足が今夜だけ、ほんの気まぐれのように自由を求めていた。

「……少し、飲むか」

 ぽつりと零れたその一言は、まるで誰かに許しを乞うような弱さを含んでいた。

 蓮はふと見上げた。

 ビルの外壁に取り付けられたガラスが、街の光を反射して淡く輝いている。その二階――特にひときわ美しい金色の光が目に飛び込んできた。

 ――CRYSTAL ROSE。

 柔らかく灯る薔薇のロゴが、夜の闇の中で優しく鼓動しているかのようだった。

 その看板は、今夜の蓮にとって何かを告げる“合図”のように見えた。

 入るべきか、引き返すべきか。

 一瞬だけ迷った。

 だが次の瞬間、なぜか心がそっと背中を押す。

 まるで運命に導かれるかのように、蓮はエレベーターへ歩き出し、十二階のボタンを押した。

 静かに閉まる扉。

 上昇する機械音が、いつもよりもずっと胸の奥に響いた。

 ――何かが変わるかもしれない。

 そんな予感だけが、わずかに胸をざわつかせた。

 十二階。

 扉が開くと、重厚感のある木製のドアが蓮を出迎えた。

 手をかけ、押し開ける。

 ――瞬間、眩い光と華やかな音が、蓮の身体を優しく包み込んだ。

 柔らかいジャズピアノの旋律が流れ、グラスが触れ合う微かな音、低く囁くような笑い声。

 天井から吊るされたクリスタルの照明が無数の光を砕き、床に散らしている。

 そこは、都会の喧騒の中にひっそりと浮かぶ“異空間”だった。

 静けさと華やぎが共存する、大人のための夜。

 その光景に蓮は思わず足を止める。

 ――そして。

 カウンターの奥から出てきた女性が、ふと顔を上げた。

 「いらっしゃいませ」

 その瞬間だった。

 蓮の時間が、ふっと止まった。

 腰まで届くほどの艶やかな黒髪が、カウンターレールの光をすくってふわりと揺れる。

 肩に流れ落ちる髪先には深紅のドレスが柔らかく反射し、その光が彼女の白い肌をさらに際立たせていた。

 白磁のような肌。

 整った横顔。

そして、静かに微笑む唇――。

 “美しい”では足りない。

 蓮は、その場に立ち尽くした。

 彼女の名は、成瀬 玲。

 その名をまだ知らぬ蓮は、ただ息を呑む。

 胸の奥で、何かが淡く灯る音がした。

 彼女の気品と儚さ。

 夜の女王のような艶やかさと、少女のように無垢な瞳。

 すべてが絶妙な均衡で存在していた。

marimo

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